Blues Wark! 畑ひろし  (2006年10月12&13日ニューヨーク録音)
 
 
 


第3作アルバム Blues Wark! の発売に向けて。

十数年前、大阪でもミュージシャンが仕事を終えた後ジャムセッションを、ときには朝までやってたんですが、ニューヨークから来ているミュージシャンもふらっとコンサ-トの後とか楽器をもって現れたりすることがよくありました。二人とはそんな中で知り合い、何度も演奏するうち年齢が近いこともあってすぐ仲良くなりました。そのうち僕のリーダーアルバムを作る話になり、彼等にもちかけたところ快諾してくれました。
二人ともちろん偉大なミュージシャンですが、まずルイス・ナッシュについて言えば、前で演奏している者の気持ちを汲み取る強力なアンテナを持ったドラマーだといえます。ときにフロントがやろうとしている事を先に察知して、すでに先にそれを表現しやすい状況を作ってくれたりします。僕の知っている他のアメリカ人のドラマーは自分は自分の道をゆき、お前はお前の道をゆけというタイプが多いんですが、ルイスはトミー・フラナガントリオでの経験が長かったこともあるのかもしれませんが、ある意味特別なドラマーだといえます。

ピーター・ワシントンもルイスとリズムセクションとして長いですね。素晴らしいグル-ヴ感を提供してくれます。昔大阪で朝までジャムセッションにつきあってくれた事もありました。バッキングはもちろんアメリカ屈指ですが、彼のソロは小節に対して全く自由なメロディを構築していていつも感心します。予想外のところから始まって次々不思議な関連のあるフレーズが続きます。彼もギターが大好きで僕と同じくオスカームーア(キングコールトリオのギタリスト)の大ファンです。2002年のセカンドアルバムでは約半分の曲を彼とデュオでとりました。

このメンバーで最低3枚は作りたかったのですが、同じメンバーにあえてこだわっった理由は、1つにはバーニー・ケッセルのポールウィナースの存在もありましたが、次々とメンバーを変えることで話題作りをするより、同年代のお互いが、どんなミュージシャンかを理解しあい、お互いの変化や成長も音楽という形で表現し発表したかったからです。

1枚目は経験豊富な彼等の力を借りた(とくにLewisは頑張ってくれました)部分も多かったのですが、 2枚目は後で触れますがテロのせいで半分はRay Drumondを含むトリオ、半分はPeter Washingtonとのデュオという変則的なものになり、結果的にはそれがそのままアルバムの個性になったような気がします。

私も自分なりに経験を少しは積んできたので、今回はよりリラックスしたより親密で緊迫感のある3人のトリオの音楽をやりたかったです。また自分のアルバムで初めてソロギターを録音しました。

彼等はいつも私が何をどんなふうにやりたいか、じっと聴いて理解しようとしてくれます。今回は増尾好秋さんの助言もあり本当に気持ちよく演奏させてもらいました。

ギタートリオの楽しさ、つまりピアノほど分厚いハ-モニーは出せない、かといってサックスなどのように口で肉声的に歌うわけでもないギターという楽器の多様性、同じ弦楽器のいわば兄弟であるベースと、リズム楽器であって単なるそれをはるかに超えた表現のできるドラムスという楽器、この3つだけのからみあいで織られた音楽。

増尾さんは学生時代からの憧れのギタリストでした。2枚目のアルバムは本当は全曲彼の"THE STUDIO"でとるはずだったんですが、ちょうど2001年9/11 のテロの日にぶちあたってしまい、数日後苦労して録音し終えたという思い出があります。今回初めて共同プロデュースしてもらいました。録音日の数日前彼に会いに行ったんですが、アンプとギターが用意してあり、『なにかやろうよ!』といわれ時を忘れてセッションしました。

偶然録音日が彼の誕生日(60歳!)でした。今回は彼の的確なアドバイスとディレクションで1度も煮詰まることなくスムーズに録れました。ぼくの譜面の中のミスや、アレンジの改良など、とても助かりました。SonnyRollinsの話題でミキサールームは大盛り上がりでした。終わってから休む間もなくLewisとPeterはジミー・ヒースビッグバンドの仕事でブルーノートへいきました。最小単位のバンド(ギタートリオ)から夜はビッグバンドという2日間で彼等もおもしろがっていました。

近いうちに彼等とトリオでツアーをやりたいですね。ソロギターや2ギターのアルバムもそのうちやってみたいです。Vocalと演奏するのももちろん大好きです。

 
 
 
 
     
               



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